top_bar.GIF (1682bytes)
地図の立体感を出す秘訣
+
+
c1.gif (13k)
これ何の地図?
錯覚を利用する「ぼかし」の起伏
+
+
小学生が使うような地図帳にも、観光に使うガイドマップにも、ある工夫が施されている。平面上に立体感を出す工夫である。山の起伏をいかに表現するか。その工夫が、地図上に「山あり、谷あり」を演出して、立体感を出してくれる。これが、地図を見やすくさせ、面白くしてくれる。このぼかし(レリーフ)の工程を手作業でやることに、森下さんはこだわる。ぼかしを、手で描ける人は、もうわずかになってしまった。

「ぼかし」は、地形に起伏をつけるために、エアーブラシや筆、鉛筆などで影をつけていく手法です。実際の地形に基づいて、西北の方向(左上)からの光線を想定しながら陰影をつけていくのです。緻密な作業です。実際の陰影とは当然違っていますが、いかに自然な仕上がりに見せるかが、この仕事の難しさであり、楽しさでもあります。
手作業でそんな面倒なことをしなくても、衛星写真を使えば手軽に地形表現ができるだろうと思われるかもしれませんが、それには、いくつかの問題があるのです。一つは、衛星写真には雲が写ってしまうこと、それから、「影」の問題です。北が上の、いわゆる正方位の衛星写真には、南からの光線でできた影がついています。ということは、地形の凹凸が逆に見えてしまうのです。人間の目では、左上からの光線でできた影がついているとき、谷は谷、尾根は尾根にとらえることができるんです。

等高線を基に自動的に影をつけるコンピューターソフトが、すでに登場しています。しかし、手で描いたときのような温かみまでは、出せません。いずれは、自然な感じも表現できるようになるのかもしれませんが、いまはまだ十分ではありません。
ところで、日本で地形がきちんと描ける技術を持つ人は、もはや10人にも満たないのではないでしょうか。30代以下の人で描ける人を、わたしは知りません。地形図を描く仕事だけでは生活できないご時世ですから、仕方ないことかもしれません。でも、もし、やってみたい人がいたら、教えてあげたいと思っています。
構成 三代川律子[フリーライター]



次の画面
衛星写真から地形の起伏を『ぼかし』で表現。匠技を公開。
+
+